またもや、「本が好き!」さんから本をいただいていました。
今度は、思いきりとっつきやすくビールを巡るお話です。
でも、そのビールが誰よりも美味しく飲める人のお話ときたら、
少し妬けるでしょう?(笑)
ビール好きな男の子にもってこいのお話だったのかもしれません。
少年の日の秘密基地。
この言葉だけで、もう胸が高鳴るなら、
きっとこれを読んでくださっているあなたは、
かつての少年だ。
仲間と過ごした時間は遠くに過ぎ去っても、
その時の記憶はいつも胸を温めてくれる。
だけど、秘密基地を一緒に過ごした仲間と同じ時は帰ってこない。
みんなバラバラになり、思い出だけが頑として存在している。
普通は、そんなものだと思う。
それが、正吉、広治郎、勇、薫にとっては、違っていた。
大好きだった女の子、茜ちゃんへの思いとともに、
憎い敵のビールを飲み干した時から、
勇がビール・ダッシュと走り出して、皆がそれに続いた時から、
彼らはビール祭りの常連になった。
まだ12歳。
苦いとしか思えないビールは大人への入り口ですらなかった。
15歳。
修学旅行先でこっそり買いこんだビールに焼酎。
まったくこの子達はどうなっているんだろう。
未成年者はお酒を飲んではいけません。
そんな当たり前のことは、完全に無視され、
一緒にタブーを破ることで面白がろうとする。
17歳。
引っ越してしまった広治郎のペンションで、
失恋した正吉の自棄ビールと花火。
火遊びは、思いもかけない顛末をもたらし、
なくすということで、彼らは深く思い出を胸に刻むことになる。
それにしても、なんてアウトローな小説なのか。
重罪だって、少年を苛めることもないという素っ頓狂な説明で、
何事も穏便に済まされてしまう。
これは、もはやファンタジー小説なのかしら。
責任を自覚すること、責任をとることなくして、
人は大人にはなれない。
18歳。
進路が別れていく時、
別れの言葉がビール・ダッシュというのはいかしてる。
19歳。
地元に残った正吉がみつけた目標は、
彼女の実家の酒造での焼酎づくりだった。
20歳。
22歳。
25歳。
ぼんやりした目標が生活の指針に変わっていく時。
大きな会社に勤めていた広次郎、
地元にもどって市役所勤めの薫、
何度目かでインターネット関連の会社に職をかえた勇、
ビール造りを実現させようと必死の正吉、
正吉の子どもっぽい他力本願ぶりには広次郎でなくても呆れるが、
仲間ののりで好きなことが実現できたらそれに勝る幸せはないのだろう。
28歳。
4種類のビールにつけられたその名前。
単純だからこそ、ぐっとくる。
30歳。
新山ビーチ、ハレの日。
仲間。
12歳のあの日からずっと彼らは、ひとつにつながっていた。
ビール工場の閉鎖から、新たな地ビールができるまで。
一緒に、その最高の一杯を飲み干すまで。
そして、きっとオヤジになっても、彼らのビール祭りは続くのだろう。

このお話は、男の子たちの夢の物語だ。
彼らがもうちょっと汗、心の汗(涙)を流していたら、
もう少し共感できたのかもしれない。
多少、ご都合主義的にお話が進んだので、しらけてみていた部分がある。
でも、なんといっても、秘密基地を共有した仲間がいるだけで、
その仲間が30歳になってもそばにいるだけで素敵なことだと思う。
これは基地をもたない(昔の)女の子の憧れと僻みなのかもしれない。
女の子だって、仲間と一緒に、ビールで乾杯したい。
大好きな友達と一緒に、夢を実現させたい。
私は無性に、友だちとビールを飲みたくなった。

各章ごとに記されたビールコラムは、思った以上にとっつきにくく、
ビールの泡が消えて行くように、小説の味わいを消していった。
格調高さはビールには似合わない。似合わないと思う。
何も考えず、カジュアルにゴクゴク喉をならして、琥珀色の液体を喉に流しこみたい。
ビールの最初の一口は無条件に、至福の時を連れてきてくれる。
ビールが大好きだ。

ビールボーイズ
Amazonで購入
書評/国内純文学